2008 Fiscal Year Annual Research Report
否定表現の認知的・身体的基盤についての動画を用いた反応実験に基づく研究
Project/Area Number |
19500223
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
竹内 義晴 Kanazawa University, 歴史言語文化学系, 教授 (10163388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 博幸 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (20345648)
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Keywords | 否定 / 身体表現 / 認知言語学 / 否定の認知 / 日本語 / ドイツ語 / 身体性 / 認知の身体的基盤 |
Research Abstract |
日本語とドイツ語の母語話者に対して行ったインタビューにおいて現れる否定の言語表現に付随する否定の身体表現の分析を進め、日本語に現れる否定の身体表現はドイツ語の否定言語表現にも付随して現れることを確認した。このことは、否定の認知が、人間の自然言語における多くの認知と同様に、論理記号的なディジタルな性格をもつのではなく、むしろ、人間の身体経験に基づいて緩やかに拡張された、ネットワーク上の構造をなしているだろうという、認知言語学的な仮説を裏づける、言語外的な証拠の一つといえるだろう。 また、これらの身体表現の認知上、および、コミュニケーション上の機能は、日本語とドイツ語において重なり合わない部分があることが確認された。このことは、たとえば日本語とドイツ語における否定疑問に対する答え方が違うという言語事実を説明する強力な背景をなしうる。つまり、否定の認知構造に違いがあるから、言語上のふるまいに違いがみられるという論を展開できるのである。 これまでの私たちの成果は、インタビューの分析という手法をもちいて、言語表現と身体表現を解釈することによって、行われてきた。これまでの考察を基盤に据えて、現在、私たちは、プライミングテスト作成プログラムを使い、別の角度から、私たちの議論の実証性を高める実験を準備中である。 質問とその状況に組み合わせを設定することによって、否定の認知を構成していると思われる認知単位のうちの、「拒否」、「打ち消し」、「嫌悪」、「強め」、「不確かさ」などの要素のどれが出やすそうなのか、あらかじめ予測することができる。これらの組み合わせをプライミングとして提示し、身体表現による回答が適切なものとして受け止められるかどうかについて、ほぼ実験プログラムが完成した。次年度は、この実験を実施し、日本語とドイツ語の否定の認知について、さらに実証的な裏付けをする予定である。
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