2009 Fiscal Year Annual Research Report
否定表現の認知的・身体的基盤についての動画を用いた反応実験に基づく研究
Project/Area Number |
19500223
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
竹内 義晴 Kanazawa University, 歴史言語文化学系, 教授 (10163388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 博幸 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (20345648)
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Keywords | 認知言語学 / 否定の認知 / 認知の身体基盤 / 身体表現 / 身体経験 / 否定 / 身振り / ジェスチャー |
Research Abstract |
前年度までに、日本語とドイツ語の母語話者に対するインタヴューのビデオ記録を分析し、否定表現が身体的に動機づけられ、認知のネットワークをなしているという仮説の妥当性を確認してきた。 今年度はさらに、実験的手法(プライミングテスト)により、否定の身体表現と言語表現の関係についてのより実証的な研究に取り組んだ。日本語とドイツ語の母語話者である被験者に対して、発話の状況と、その状況においては否定の答えが自然である言語表現による質問の4通りの組み合わせを示した後で、「強い首ふり」、「弱い首ふり」、「首傾げ」、「うなづき」、「しかめ顔」の5種類の動画を提示、被験者自身の反応としての適切さを合計100試行分判断させた。 この実験の結果を私たちはまず、日本語の母語話者について分析し、日本語の母語話者においては、強い首ふり、弱い首ふり、首傾げ、うなづき、しかめ顔のそれぞれの身体表現に動機つけられた否定の認知が、それぞれに構造化された分布を示していて、さらに、コミュニケーション上も有意な機能を担っていることがおよそ確認された。 ドイツ語の母語話者に対して行った実験の結果は現在さらに詳しく分析中であるが、やはり、強い首ふり、弱い首ふり、首傾げ、うなづき、しかめ顔のそれぞれの身体表現に動機づけられた否定の認知が有意な分布をなしており、首ふりに動機づけられる否定の重要性などは日本語とほぼ同じであること、うなづきが、日本語におけるのと似たように、否定の関係する疑問や、助言の意味での修辞疑問に対して出やすいことなども見ることができた。 今後さらに分析を深め、方法を精緻化していかなければいけないが、これまでの研究によって、認知の内実を実験的な手法によって、実証的に探っていくという私たちの画期的な試みが有効であり、認知言語学を実証科学の一分野として確立していくことが可能であることが示し得たと、私たちは考えている。
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Research Products
(2 results)