2007 Fiscal Year Annual Research Report
グラフ理論・組合せ可換代数を用いたグラフィカルモデルの統計的推測に関する研究
Project/Area Number |
19500233
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原 尚幸 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 助教 (40312988)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹村 彰通 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 教授 (10171670)
土谷 隆 統計数理研究所, 数理推測研究系, 教授 (00188575)
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Keywords | グラフィカルモデル / 縮小推定 / 個票秘匿 / マルコフ基底 |
Research Abstract |
1.Poisson分解可能モデルにおけるパラメータ推定の決定理論的考察:多変量Poisson分布の縮小推定の議論を分解可能モデルに拡張し、最尤推定量を一様に改良する推定量のクラスの導出に成功した。また改良型推定量に基づいて構成されたBootstrap同時信頼領域が、最尤推定量に基づくものよりも包含確率、領域の体積の両面において優れていることを数値実験により示した(Hara and Takemura (2007))。またこの問題をベイズ推定の観点から考察し、許容的でかつ最尤推定量を一様に改良する推定量の導出にも成功した。この成果については現在投稿中の段階である。 2.2標本間のスワップの可能性に関する数学的考察と実用的スワップアルゴリズムの提案:個票データ秘匿の問題に関し、いくつかの周辺頻度が既に公表済みという状況下における2標本間スワップの問題の数学的考察を行った。スワップは常に可能であるわけでは必ずしもなく、その可能性は公表されている周辺に対応する変数集合に依存する。ここではこの問題をグラフ理論の立場から整理し、2標本間のスワップを可能にするための必要十分条件が、周辺の変数集合がなすある種のグラフの分離性を用いて表されることを示した。また2標本間スワップを行うための効率的アルゴリズムを提案した(Takemura and Hara (2007))。 3.Subtable sum problemのマルコフ基底:2元分割表において、部分的なセルにのみ2因子交互作用が存在するようなモデルを考える。このモデルは、例えば水準に順序が存在する場合の変化点モデル(ブロック交互作用モデル,Hirotsu (1997))や、2変数の対角成分にのみ交互作用が存在する準完全独立モデル(厳密にはその部分モデル)などを含む。このモデルの場合、十分統計量は行和・列和に加え、交互作用が存在する部分表に関する頻度の和(subtable sum)で与えられる。このモデルを正確検定によって適合度検定する場合のマルコフ基底を求める問題をsubtable sum problem呼ぶことにして、これについて統計学・組合せ論・代数的な視点から考察を行った。一般には交互作用が存在する部分表をどのように取るかによって、マルコフ基底は複雑にもなりえるが、完全独立モデルと同様に2次のmoveのみからなるマルコフ基底を持つモデルも存在する。ここでは2次のmoveからなるマルコフ基底を持っための部分表に関する必要十分条件を導出した。その結果、変化点モデルはこのクラスに属することを示した(Hara, et. al.(2008))。また準完全独立モデルはこのクラスに属さないが、4次のmoveまで用いることでマルコフ基底を構成することを示し、実例を通じてマルコフ基底を用いた適合度検定の有用性を示した。後者の結果に関しては現在投稿中である。
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