2009 Fiscal Year Annual Research Report
グラフを用いた統計的学習と計算推論に関する幾何学的研究とその応用
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19500249
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
福水 健次 The Institute of Statistical Mathematics, モデリング研究系, 教授 (60311362)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 思朗 統計数理研究所, 数理推論研究系, 准教授 (30336101)
赤穗 昭太郎 産業技術総合研究所, 脳神経情報研究部門, グループ長 (40356340)
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Keywords | グラフ / 統計的推論 / 確率伝搬法 / 情報幾何学 / 位相幾何学 / カーネル法 / 再生核ヒルベルト空間 |
Research Abstract |
本年度は確率伝搬法の幾何学的研究に関して重点的な研究を行った。確率伝搬法は、統計物理学でよく知られたベーテ自由エネルギー関数と密接に関係しており、確率伝搬法の不動点とベーテ自由エネルギーの停留点が一致することが知られていた。本研究では、ベーテ自由エネルギーのヘッセ行列式と、グラフ理論や整数論で知られるグラフゼータ関数の多変量拡張を結びつける関係式を証明し、その関係式を用いて確率伝搬法の理論的な性質を解明した。グラフゼータ関数はグラフの様々な位相的情報を有するため、この関係式は確率伝搬法の数学的解析に対して新しい方法論を与えるという意義を持つ。確率伝搬法に関して新しく得られた理論的結果として、第1に、ベーテ自由エネルギーのヘッセ行列の正定値性条件を導き、ベーテ自由エネルギーが凸関数であることとグラフが2個以上の独立なサイクルを持たないことが同値であることを示した。第2に、確率伝搬法の固定点の局所安定性の条件を明らかにした。第3に、確率伝搬法の固定点が一意になるための新しい十分条件を導き、サイクルを2個持つある種のグラフィカルモデルに対する確率伝搬法の解が一意であることを示した。これらは、すべて既存の解析手法では容易に導くことのできなかった性質であり、グラフゼータ関数の方法が有力な道具となることを示している。また、グラフゼータ関数の保有する情報をさらに詳しく調べることによって、確率伝搬法の幾何学的な研究の将来の発展に本質的な役割を担うことが期待される。
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Research Products
(10 results)