2008 Fiscal Year Annual Research Report
分子間相互作用予測を目指したタンパク質複合体結合部位の幾何形状解析
Project/Area Number |
19500253
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
川端 猛 Nara Institute of Science and Technology, 情報科学研究科, 准教授 (60343274)
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Keywords | バイオインフォマティクス / 構造バイオインフォマティクス / タンパク質 / 分子認識 / 分子形状 / モルフォロジー |
Research Abstract |
本研究では、単量体の蛋白質構造からの結合分子の種類や結合力、結合部位の推定を最終目標とした。最終年度にあたる本年度は、これまで開発を進めてきたモルフォロジーを利用したポケット認識プログラムghecomのアルゴリズムを投稿論文としてまとめるため、その理論的な根拠を整理した。本アルゴリズムでは、「小球Sは入れるが大球Pは入れない蛋白質X外の空間」をポケットとして定義している。ここで、大球Pの大きさはポケットの深さ(狭さ)を規定するパラメータであり、いくつかの大きさを試して比較検討することが望ましい。そこで本研究ではK種の異なる大きさの大球{P_1,P_2,...,P_K}を用意し、それぞれの大球によるポケットを同時に高速計算するアルゴリズムを開発した。このアルゴリズムは「大きな大球で定義されたポケットは小さな大球で定義されたポケットを含む」という性質に基づいている。この性質は一見自明であるが、これまできちんと証明されたことはなかった。本年度は、モルフォロジー理論に基づくシンボル操作によりこの性質を厳密に証明することに成功した。また、このアルゴリズムにより蛋白質上に結合している分子の各原子の「深さ」を測ることが可能となった。既知の複合体立体構造データの統計により、分子種により固有の深さの偏好があること、同一分子種の各原子にも深さの偏好が見られ、分子の結合姿勢に偏りがあることが観察された。これらの知見は、結合ポケットの同定だけではなく、その「深さ」から、結合分子の絞り込みや、結合分子の結合姿勢の推定に寄与できることを示唆した。本成果で開発したアルゴリズムについては既に投稿済みであり、現在審査中である。
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