Research Abstract |
本研究は,脳の局所神経回路の回路トポロジーを解析し,脳情報処理における機能的意義を明らかにすることを目的として計画された.その実現のために,局所神経回路トポロジーの計測システムを構築するとともに,実験データに基づいた脳局所神経回路のモデリング,シミュレーションをおこなっている. 平成19年度においては,局所神経回路トポロジーの計測において中心的役割を果たす,多重電極を用いた複数のニューロンの活動の同時記録・解析法の改良をおこなった.本研究の実施において重要なポイントとして,ニューロン活動の記録時に解析のターゲットとするニューロンを定め,その活動を安定して記録することにある.そのために,これまでわれわれが提案してきた,周波数領域独立成分分析を用いたニューロン活動弁別アルゴリズムを,ディジタル信号プロセッサを有する小型コンピュータに実装し,リアルタイム処理できる装置を開発した.次に,神経組織内の回路モデルの骨格となる3次元神経組織モデルを構築した.これは,神経電極で記録される細胞外電位のゆらぎを解析した結果と,解剖学研究によって報告されている細胞密度等のデータに基づいて構築したもので,細胞外記録電極を刺入したときに観測される複数のニューロンの細胞外活動電位の時系列信号や振幅分布,パワースペクトル密度などを再現することができる.現時点では,ニューロン間の結合がないベースモデルであるが,神経活動の相関解析等に基づき,ニューロンの3次元的な結合トポロジーを導入することによって,現実の神経組織に近づけていく予定である.
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