2008 Fiscal Year Annual Research Report
キイロショウジョウバエ嗅覚神経細胞のクラス特異的な軸索投射様式の分子機構の解明
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19500267
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 啓太 The University of Tokyo, 分子細胞生物学研究所, 助教 (40425616)
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Keywords | キイロショウジョウバエ / 嗅覚神経細胞 / Runtファミリー / EGFR / 神経クラス分化 / 脳・神経 / 発生・分化 |
Research Abstract |
昨年度の本研究により、Runtファミリーの転写因子であるLozengeが、キイロショウジョウバエの嗅覚神経細胞の発生過程において、量依存的に異なる神経クラスの分化を誘導することが示唆された。本年度は、Lozengeが嗅覚神経細胞のクラス分化に関わる発生時期を明らかにするため、loenge遺伝子の温度感受性変異株を用いてLozengeの活性を発生過程の異なる時期にON/OFFさせ、神経クラス分化に与える影響を解析した。その結果、Lozengeの機能は発生期の触角原基において嗅覚神経細胞の前駆細胞が分化する時期に必要であることが示された。そこで「Lozengeの発現量が約400個の前駆細胞の間で異なり、その結果として異なる嗅覚神経細胞クラスが生み出されている」と予想し、前駆細胞でのLozengeの発現を免疫組織染色法によって解析した。残念ながら、触角原基の異なる領域において分化する前駆細胞の間でLozengeの発現量に著しい差は見られていないが、今後、異なる発生時期に分化する前駆細胞の間でLozengeの発現量を比較することで、その量依存的な細胞分化機構の詳細が明らかになると期待する。 一方、昨年度の本研究により、EGFRシグナルが嗅覚神経細胞のクラス分化に関わっている可能性も示唆されていた。そこで、EGFRをコードする遺伝子、およびシグナルカスケードの下流で働く転写因子をコードするpointedとyan遺伝子について、その変異をもつ嗅覚神経細胞のクローンからの軸索投射パターンを解析した。その結果、EGFR自身の変異では、ほぼ全ての神経クラスからの投射が見られなかった。この結果は、EGFRシグナルが、クラス分化以前に前駆細胞の増殖などのより普遍的な発生現象に関わっていることを示している。したがって、今後、温度感受性変異株を利用し、発生時期を限定してEGFRの機能を解析する必要があると考えられる。また、pointedとyan遺伝子の変異では、それぞれ特定の神経クラスの軸索投射に異常が見られた。したがって、EGFRシグナル系が嗅覚神経細胞のクラス分化に関わることが裏付けられた。しかしながら、その作用機序の詳細の解析については今後の研究が待たれる。
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Research Products
(4 results)