2007 Fiscal Year Annual Research Report
嗅神経投射により誘導される終脳形態形成の分子メカニズムの解析
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19500284
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
宮坂 信彦 The Institute of Physical and Chemical Research, シナプス分子機構研究チーム, 研究員 (70332335)
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Keywords | 嗅覚 / 嗅上皮 / 嗅球 / ゼブラフィッシュ / ケモカイン / 神経回路 / ニューロン / 軸索 |
Research Abstract |
脳の形成・発達には、末梢感覚器から脳への神経投射が重要な役割を果たしている。特に嗅神経は発達初期の脳の先端部に投射し、嗅球を含む終脳の形態形成を誘導すると考えられている。この仮説を検証するために、ケモカイン受容体Cxcr4bの機能を欠損したゼブラフィッシュ変異体を利用した。我々のこれまでの研究から、Cxcr4b変異体は同じ遺伝的背景にもかかわらず、嗅神経投射において以下の3パターンの表現型を示すことが明らかとなっている。クラス1(44%):両鼻から正常に脳へ投射する。クラス2(28%):片鼻からは正常に脳へ投射するが、もう一方の鼻からの投射を欠損する。クラス3(28%):両鼻から脳への投射を欠損する。 今年度は、各種分子マーカーを用いた免疫組織化学により、上記3クラスの表現型を比較解析した。その結果、嗅神経投射の欠損とリンクした嗅球の発達異常について以下の知見を得た。1)MAP-2およびGAD抗体により染色される糸球(嗅神経と嗅球ニューロンがシナプスを形成する機能的ユニット構造)が形成されず、嗅神経投射が正常な場合と比べて嗅球の大きさが減少する。2)介在ニューロンのマーカーであるArxの免疫活性が減少し、介在ニューロンサブセットで発現するTHの免疫活性が消失する。3)投射ニューロン(僧帽細胞)のマーカーであるTbr2の陽性細胞数が減少する。4)嗅球の嗅神経層付近に存在する性腺刺激ホルモン放出ホルモン産生細胞(GnRHニューロン)の数が減少し、GnRHニューロンの軸索が脳内に進入できずに迷走する。これらのことから、嗅神経投射が嗅球の発達に必須であることが明らかとなった。
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Research Products
(5 results)