2008 Fiscal Year Annual Research Report
成熟後に外来から誘導された眼優位可塑性の分子・細胞メカニズムについての研究
Project/Area Number |
19500285
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
俣賀 宣子 The Institute of Physical and Chemical Research, 神経回路発達研究チーム, 専門職研究員 (20209464)
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Keywords | 大脳皮質・視覚野 / シナプス可塑性 / 眼優位性 / 単眼遮蔽 / セリンプロテアーゼ / 細胞外基質タンパク質 / テレンセファリン / 興奮性入力 |
Research Abstract |
本研究は、幼弱期に正常に育まれなかった脳高次機能(大脳皮質視覚野の眼優位可塑性)を回復する手段を分子・細胞レベルで理解することにある.研究代表者は、これまでに視覚野で幼弱期(臨界期)におこる内因性の眼優位可塑性には組織型プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)およびプラスミン(Pln)が必須である事を明らかとしている.そこで、すでに可塑性のレベルが低下した成熟後のマウスに、これらのセリンプロテアーゼを外来より投与して可塑性が惹起できるかを調べることを本年度の目的とした.まず、研究代表者の仮説「可塑性を引き起こすには、tPA-Pln経路が細胞外基質を溶かし、細胞外を流動的にすることが必要」を証明するために、臨界期、および、成熟後のマウス視覚野抽出液(野生型(WT)、tPA,Plnノックアウトマウス(KO))を用いて、外来性のtPAまたはPlnによって酵素消化される細胞外タンパク質があるかどうかを調べた.解析には主に、ウエスタンブロット法を用いた.その結果、細胞接着分子であるテレンセファリン(TLCN)、NCAM、および、細胞外基質タンパク質であるラミニンが、tPAのみでは分解されないが、Plnの存在下で限定分解されることがわかった.臨界期と成熟後のWT、および、tPA KO,Pln KOなど、可塑性レベルの異なるマウスの脳組織を用いても外来性Plnによる酵素消化が認められた.この結果は、内因性のtPAにより活性化されたPlnが可塑性を調節していることを示唆している.そこで、眼優位可塑性との関連が明らかになってきたTLCNに関して、リコンビナントTLCNタンパク質を用いてPlnによる切断箇所をエドマン解析で決定したところ、細胞外に3箇所あることがわかった.現在は、成熟後マウスの第3脳室にPlnを投与し、同時に単眼遮蔽して眼優位可塑性レベルを解析中である.
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