2008 Fiscal Year Annual Research Report
発生期大脳皮質神経細胞の多段階的移動を制御する分子機構
Project/Area Number |
19500298
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田畑 秀典 Keio University, 医学部, 講師 (80301761)
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Keywords | 細胞移動 / 神経回路 / 神経発生 / 軸索伸展 / 細胞間相互作用 |
Research Abstract |
我々は子宮内電気穿孔法により大脳皮質脳室帯組織へ蛍光タンパク質発現プラスミドを導入することで、移動神経細胞の動態を観察し、その大部分が脳室下帯(SVZ)に一過性に留まり多極性細胞になること、その後多極性細胞はロコモーション細胞へと変化することを報告した。しかし、多極性細胞を経ることの意義は明らかではない。多極性細胞の時期には、移動方向と直行する接線方向に軸索を伸ばし始めることが観察されるので、正しい軸索走行の形成に必要である可能性が推測された。そこで、SVZに発現する受容体タンパク質のスクリーニングを行い、その一つとしてRobo2を同定した。8種類のノックダウンベクターを子宮内電気穿孔法により導入し、その内のいくつかで移動の遅れを観察したものの、いずれも軽度であった。また、ドミナントネガティブを導入した場合や、Robo2 K0の組織学的解析においても、またRobo2のリガンドとして知られるSlitlを多極性細胞の近傍に発現させた場合にも影響は見いだせなかった。これらのことから、Robo2は多極性細胞の移動や軸索伸展への役割は低いことが示唆された。 一方我々は、脳室帯から移動を開始する神経細胞に2つの集団があることに気付いた。1つは脳室帯で分裂を終了し、しばらく脳室帯に留まった後、典型的な多極性細胞となって脳室帯の直上、すなわち組織学的意味でのSVZに留まり、やがて放射方向への極性を獲得し、ロコモーションとなる集団。もう1つは、前者よりも早期に組織学的SVZを通過し、中間帯内へと分散し、分裂する集団である。後者はいわゆる非脳室帯前駆細胞であり、その存在する組織学的SVZを含めて中間帯内の比較的広い部分が機能的SVZに対応する。本研究課題では、組織学的SVZと機能的SVZが区別されるべきもので、後者は前者の上(脳表面側)に広がることを明確に示した。
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Research Products
(11 results)