2008 Fiscal Year Annual Research Report
ニューロン/グリア運命決定分子PRP19遺伝子の選択的スプライシング機構の解明
Project/Area Number |
19500299
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
田代 文夫 Tokyo University of Science, 基礎工学部, 教授 (70089332)
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 / 発生・分化 / mRNAスプライシン |
Research Abstract |
本研究ではprecursor RNA processing-19(PRP19)αおよびそのスプライシングバリアントPRP19βによるニューロン・グリアスイッチ機構の解明と画一的な神経細胞分化誘導系の確立を行った。 1.マウス胚性腫瘍P19細胞をレチノイン酸(RA)により神経分化誘導した際、アストロサイト分化誘導に必須なJAK-STATシグナル伝達経路の活性化と同時系列でPRP19αおよびPRP19βmRNAの発現が誘導される。PRP19の発現がSTAT3により調節されているのではないかと推定し、in silico解析によりPRP19遺伝子のプロモーター領域を解析した結果、複数のSTAT3結合配列が存在した。ラットC6グリオーマ細胞に、JAK阻害剤AG490を処理し、cAMPによりアストロサイト分化を誘導すると、AG490濃度依存的にSTAT3のリン酸化が抑制され、PRP19αと特に著しくPRP19βの発現が抑制された。 PRP19βはN末端領域にring finger domain構造を有している。また、昨年度の解析でPRP19β特異的に結合するタンパク質として、プロテアソーム活性化因子PA200が同定されたことから、PRP19βがE3触媒に関与することが示唆された。PRP19βの標的タンパク質をα-PRP19抗体を用いた免疫沈降解析により調べた結果、PRP19βがSTAT3の脱リン酸化に係るPTPIBと結合し、ユビキチン化を導くことが明らかとなった。PRP19βのring fillger domainを欠損させると、PTP1Bのユビキチン化ならびにアストロサイト分化が抑制されることから、PRP19βはSTAT3により発現誘導されると共に、PTP1Bの分解促進を介してSTAT3の活性化増強・維持に係ることが示唆された。 2.哺乳類の中枢神経系におけるニューロンは、分泌する神経伝達物質により多様なサブタイプが存在し、正確な多様化が正常な神経回路の形成に必要である。P19細胞にRAにより神経分化誘導後、4日目にNGFおよびBDNFを添加し、各サブタイプマーカーの発現を調べた。その結果、NGF刺激によりコリン作動性(ChAT)、ドーパミン作動性(Nurr1)、グリシン作動性(NR3A)の発現が亢進したのに対し、グルタミン酸作動性(NR2A)の発現が抑制された。一方でBDNFではNR2Bの発現が亢進しNR3Aの発現が抑制きれ、グリシン作動性ニューロンの特異化を抑制することが示唆された。
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Research Products
(3 results)