2008 Fiscal Year Annual Research Report
神経伝達物質放出機構におけるSNARE制御タンパク質トモシンの役割とその作用機構
Project/Area Number |
19500322
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
匂坂 敏朗 Kobe University, 医学研究科, 教授 (80359843)
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Keywords | 神経伝達物質の放出機構 / SNARE複合体 / トモシン |
Research Abstract |
神経細胞が次の神経細胞に情報を伝えるシナプス伝達の主たる過程は、神経伝達物質の放出により行われている。従って、神経伝達物質の放出の過程を解明していくことは、シナプスの可塑性ひいては記憶形成の過程を理解する上で重要である。これまで、私共は、神経伝達物質の放出にSNARE系の活性制御タンパク質であるトモシンが抑制的に働くことを明らかにしている。トモシンがt-SNAREsとトモシン複合体を形成し、小胞融合に必須なSNARE複合体の形成を抑制することにより、神経伝達物質の放出を制御している。このトモシンの生体での機能を明らかにするために、トモシンノックアウトマウスを作成し、トモシンの生理的作用について解析し、以下の結果を得た。 1、トモシンノックアウトマウスでは、神経伝達物質の放出が促進した。 2、トモシンノックアウトマウスでは、短期記憶に異常が認められた。 3、トモシンノックアウトマウスでは、SNARE複合体量が減少した。 4、トモシンのN末端側のWD40リピートドメインがt-SNAREsと結合し、トモシンはSNARE複合体の形成と多量体化を促進した。 5、培養ラット上頸交感神経細胞において、WD40リピートドメインがアセチルコリン放出を抑制した。 以上の結果から、N末端側のWD40リピートドメインによるSNARE複合体の多量体化を促進とC末端側のv-SNARE相同領域によるSNARE複合体形成の抑制の二つの作用により、トモシンが強力に神経伝達物質の放出を抑制することを明らかにした。 このように本年度は、トモシンの促進的作用の分子メカニズムについて、当初の計画以上の成果をあげることが出来た。
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Research Products
(3 results)