2008 Fiscal Year Annual Research Report
ラット脊髄後角の痛み伝達制御におけるアラキドン酸カスケードの役割
Project/Area Number |
19500351
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
熊本 栄一 Saga University, 医学部, 教授 (60136603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 亜美 佐賀大学, 医学部, 助教 (70336139)
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Keywords | メリチン / ホスホリパーゼA_2 / アラキドン酸カスケード / 脊髄後角 / 抑制性シナプス伝達 / IPSC / パッチクランプ法 / 痛覚情報伝達 |
Research Abstract |
末梢から後根を通って脊髄に入力する痛み伝達の制御は、脊髄後角第II層(膠様質)の神経回路におけるシナプス伝達の修飾によりなされることはよく知られている。ホスホリパーゼA_2(PLA_2)活性化ペプチドであるメリチンを用い、PLA_2活性化がアラキドン酸カスケードを介して膠様質の興奮性およびグリシンやGABAを介する抑制性のシナプス伝達を促進することを昨年度までに明らかにしている。グリシン作動性とGABA作動性のそれぞれのシナプス伝達促進の機序は互いに異なっていた。前者はPLA_2活性化により生成されるアラキドン酸のリポキシゲナーゼ代謝物がCa^<2+>非依存性にグリシンシナプスに作用することによるのに対して、後者はアラキドン酸それ自身が興奮性シナプス伝達の促進とそれに引き続くアセチルコリンとノルアドレナリンの放出、そしてニコチン受容体、マスカリン受容体、α_1受容体を活性化することによることを解明している。今年度は、成熟雄性ラットから作製した脊髄横断スライスの膠様質ニューロンにホールセル・パッチクランプ法を適用して、様々な薬物の作用下でメリチンが抑制性シナプス伝達に及ぼす作用を調べることにより、以下のことが明らかになった。(1)メリチンと異なり、リポキシゲナーゼ代謝物の1つであるロイコトリエンB_4(LTB_4;0.1-0.5μM)はグリシン作動性のシナプス伝達に作用しなかったので、LTB_4以外の代謝物が関与している。(2)メリチンによるGABA作動性のシナプス伝達の促進は、脊髄後角でGABA作動性シナプス伝達の促進に関与するP2X受容体と5-HT_3受容体の阻害剤により影響を受けなかったので、ATPやセロトニンは関与していない。(3)メリチンがGABA作動性シナプス伝達の促進を示したニューロンにおいてニコチン受容体やマスカリン受容体の作動薬およびノルアドレナリンも同様な作用を示した。
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Research Products
(48 results)