2007 Fiscal Year Annual Research Report
酸化ストレス誘発動物発癌モデルにおける染色体変化の解析
Project/Area Number |
19500361
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
赤塚 慎也 Nagoya University, 大学院・医学系研究科, 助教 (40437223)
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Keywords | 病態モデル / 染色体不安定性 / 酸化ストレス / 発癌 |
Research Abstract |
酸化ストレス発癌モデルとして認知されている鉄ニトリロ三酢酸誘発ラット腎癌は高い染色体不安定性(染色体レベルでの広範なゲノム変異)を示すことを,アレイCGH解析により明らかにした。 癌では,ゲノム不安定性(遺伝子配列の変異や染色体の構造および数の変化)が多く見られる.近年の研究により,悪性腫瘍一般で見ると遺伝子配列の不安定性を示す症例はむしろ少数で,塩基配列は比較的安定でありながら,染色体の数あるいは構造が著しく不安定なタイプの遺伝的不安定性を示す症例が非常に多いことが明らかとなった.したがって,一般的なヒト癌の発生過程を明らかにするためには,癌における染色体不安定性の動態を詳細に解析することが重要であると考えられた. 鉄ニトリロ三酢酸(Fe-NTA)誘発ラット腎癌モデルは,酸化ストレスによる動物発癌モデルとして広く認知されている.本研究の目的は,Fe-NTA誘発ラット腎癌における染色体変化の解析を基盤として,新規の酸化ストレス発癌関連遺伝子を同定し,また発癌過程における染色体不安定性誘導機構を解明するための動物モデルを確立することである. 13例のラット腎癌について,全染色体にわたるコピー数変化の規模は総じて大きく,ヒトの癌で見出されてきた染色体不安定性に匹敵するものであった.これまでにアレイCGHを用いて調べられた動物の腫瘍については,遺伝子改変動物を用いた場合を除いては,今回のFe-NTA誘発ラット腎癌の結果ほどに高い染色体不安定性を示す報告例は見当たらない.散発性のヒト癌の多くが染色体不安定性の特徴を有することを考えると,今回得られた結果はヒトの発癌においても酸化ストレスが要因となっている割合が高いということを示唆している.したがって,本発癌モデルは他の化学発癌モデルと比べて,一般的なヒト癌との共通性が高く,発癌研究のための動物モデルとして有用であると考えられる.
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