Research Abstract |
本研究は腹腔内管腔臓器のCT画像と内視鏡による実画像から,観察範囲の臓器全体を1枚の精細な立体画像を作成し,2つの画像を融合することで癌のような病変の進達度や粘膜面の広がりの診断に有用な情報を提供することを目的とする。 本研究では内視鏡のビデオ映像から得られた管腔臓器内面および外表面の全体画像の精度を上げ,CT画像から得られる全体画像と重ね合わせることで,両画像の立体融合画像を作成し,両画像の対応点の抽出とそれに応じた変形により両画像の融合を達成する。 平成19年度は,管腔臓器のうち,上部消化管,大腸,尿管,膀胱,尿道の内視鏡ビデオ映像をもちいた立体的画像を,病理標本のような画質で自動作成するところまで達成した。この技術の特長は,現行の内視鏡を用いて内視鏡と対象物との距離を計算し,連続的に仮想平面に配列することで立体的な「体内地図」を作成することである。また腹腔鏡の動きによる視差から立体情報を抽出し,動画として表示ができることを見出した。 立体形状の精度をダミーや,同一症例のCT,MRIのような他の画像情報と比較することで検証し,整合性を確認し得た。対応点の設定の基幹部分は達成できたと考える。 内視鏡ビデオ映像から,動きがあり不整形の軟性構造物である管腔臓器の内面を切り開いた立体画像を,自動的に作成する技術は前例がない。形状が単純な人工物であれば画像処理はより簡単であり,この技術の工業用途などへの汎用性の高さを示すものと思われる。また管腔臓器内面の内視鏡全体画像は病理標本とも一対-対応するので,従来の内視鏡診断の精度を検証する方法を提供することが期待される。このことは内視鏡診断の感度だけでなく,特異度を定量的に示すことになるので,医療における内視鏡診断の精度を高めることが期待される。
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