Research Abstract |
FDG-PET画像の読影において,関心組織のSUVが参照される.高い値をもつ領域は異常集積であるといえるが,正常な糖代謝であっても高い値を示すことがあるため,その判断には十分な経験が必要である.そのため,コンピュータを用いて正常な臓器や組織ごとの糖代謝の範囲を3次元的な分布を記録し,患者の代謝の状態と自動的に比較する手法は,脳画像における機能解析で用いられているように,画像を読影する際の補助となり得ると考えられる. われわれは,FDG-PET体幹部画像における正常代謝を表現するために,男性143名,女性100名の正常例から男性と女性の標準FDG-PET画像(以下,標準画像)を作成した.この標準画像は,それぞれの性別のFDG-PET画像において,腎臓,肝臓,膀胱,および体表を認識し,剛体/非剛体変形技術を利用して1つの体形に位置合わせを行った結果である.そこでは,SUVの平均と標準偏差が3次元的に記録される.つまり,この標準画像は,正常な糖代謝の範囲(信頼区間)を表現したといえる.この標準画像と患者のFDG-PET画像との位置合わせを行うことによって,患者画像のSUVの偏差が計算可能となり,正常な糖代謝からどの程度離れているかを統計的に表すことができる.本年度は,手法の有効性を示すために,ある異常症例群から抽出した432の異常集積部位について偏差の算出を行った.432領域中49領域は領域内のSUVの最大値が2以下であったが,そのうちの39領域において偏差が2を超えた.また,432領域中299領域はSUVの最大値が5以下であったが,そのうちの285領域において偏差が2を超えた.正常集積との比較を綿密に行う必要があるが,この偏差を医師に提示することによって,その部位が正常な分布の平均からどの程度外れているかを定量的に提示することが可能となった.さらに,過去画像と現在画像の変形結果を用いて,経時的なSUVと偏差の算出が可能となった.これらの値は,癌の化学療法や全身の癌転移部位の検査の診断支援の要素となると考える.
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