Research Abstract |
バイオフィードバック訓練における脳内過程を調べるために,皮膚温バイオフィードバックを対象として,訓練時の脳活動をfMRIにより計測するとともに,バイオフィードバック過程をいくつかの要素に分けて,それぞれに特徴的な脳活動をfMRI計測により捉え,全体像と組み合わせるという研究手法をとった。 まず,その要素として,前年度は「気づき」を扱ったが,本年度は入力情報への関心の程度,すなわち「意識の振り向け」(attention)に関する神経過程を扱った。実験は聴覚に関してA,B二種類を行った。実験Aはある音楽メロディーに対する意識の違いを見るもので,無音状態,聞き流し状態,傾聴状態をそれぞれfMRIによって比較した。その結果,音楽受容そのものに関係する聴覚過程,メロディーに関係するイメージ生成過程,およびそれらに対する意識の振り向け過程が脳の各部位に同定され,意識に関わる活動は前頭前野の比較的下部に推定された。また,実験Bでは2種類のメロディーを混合して聞かせ,いずれか一方に意識を振り向けることを課題とした。被験者の行動はその同定数によって評価した。その結果,大脳聴覚野,運動野,眼窩皮質,小脳等に活動が見られ,とくに眼窩皮質活動とパーフォーマンスの間に相関が見られた。以上より,音楽受容における意識の集中や弁別課題に対する神経活動は,大脳前頭前野下部において特徴的であることが示された。 一方,皮膚温バイオフィードバック訓練中の脳機能計測は本年度も引き続いて行われ,訓練の成績との照合が行われた。このようなバイオフィードバック過程全体に関係する脳神経活動は,関連する変量が多岐にわたるため,実験後の内省報告(とくに用いたイメージ)を考慮するなど,慎重な解析が必要であった。その結果,訓練が進むとともに大脳辺縁系および視床下部の活動が見られる傾向にあった。現在,多変量解析等の手法により,さらに詳細な分析が進行中である。
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