Research Abstract |
本年度は,はじめに視線解析装置を用いて,専門医師によるX線CT画像における肺結節の読影・診断過程の解析を行った.すなわち,医師が注視している画像部分(ROI)を抽出し,その特徴量解析を行った.この結果,従来の肺結節陰影鑑別システムが不得手とする画素値が極端に小さい陰影や,胸壁付近の円形を呈さない結節陰影も,医学的知識を元に,総合的に診断していることを明らかにした.これは,ROIの画像的特徴量だけではなく,その周辺や疾病進行過程の情報も加味した総合的な診断が必要であることを意味し,従来のCADアルゴリズムに不足している点を明らかにした点で,今後のCADシステム開発に向けて意義深い解析結果である. つぎに,診断対象となるX線CT画像のデータベース構築を開始するとともに,収集した画像データの特徴量解析を行った.従来結節候補として検出していた円形陰影のうち,非結節と真の結節陰影と診断されたものの違い,ならびにその判定基準を,医師による診断過程の解析結果も踏まえて検討し,同一CTスライスだけの情報ではなく,同位置の体軸方向の画素(CT)値の変化が,実際の診断上でも重要な判別基準であることを明らかにした.この変化を検出するアルゴリズムを開発して適用したところ,従来法と比較して真陽性率90%条件での偽陽性率を30%以上改善することができた.このような高い真陽性率条件における偽陽性率の劇的な低下は,本研究課題が目標としている,医師が信頼できる鑑別性能を持つシステムを実現するために非常に重要である.
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