Research Abstract |
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease; COPD)は,世界的にその有病率が増加し,2020年には死亡原因の第3位になると予想され,その対策が急務の課題である.本研究は,COPDにおける非薬物療法として低強度運動療法と栄養療法を主体とした包括的呼吸リハビリテーション(リハビリ)の有用性を検討することである. 対象は,市立秋田総合病院の呼吸器内科外来にて通院治療中で,書面同意が得られた安定期COPD患者63名を対象とした.急性増悪などによりドロップアウトした6名を除いた57名に対して3カ月後に再評価を行った.%IBW<90%の32名のうち積極的な栄養療法を希望した17名(積極群)には3カ月間にわたり栄養補助食品を2pack/日摂取させた.検査項目は,身体計測として身長と体重測定を行い%IBWを求め,身体組成は,体脂肪率,脂肪量(FM),除脂肪量(FFM)を計測した.安静時エネルギー消費量(REE)を携帯用簡易熱量計(Metavine_<TM>; VINE社製)で測定し,予測安静時エネルギー消費量(REEpred)をHarris-Benedictの式から求めた.炎症マーカーとして高感度CRP,TNF-α,IL-6,IL-8,代謝マーカーとしてLeptin, Ghrelin,栄養指標として血清Albumin, Transferrinを測定した.また,呼吸筋力,体重支持力指数(Weight Bearing Index: WBI), 6MWD, HRQoL (CRQ)を併せて評価した.COPDの半数以上が栄養障害を呈していた.REE/REEpredは,1.37と亢進していたが,エネルギー充足率は,83%に過ぎなかった.%IBW分類による比較では,%IBW<90%群が,90%≦%IBW<110%群と110%≦%IBW群に対してLeptinが有意に低値となり,GhrelinとTNF-αでは有意に高値となった.GOLDの重症度分類による比較では,最重症・重症群が%IBW, FMI, FFMIにおいて,有意に低値となった.積極群では,3カ月後にCRPが有意に低下し,WBIと6MWDは有意に向上した.%IBW90未満のCOPDにおける積極的栄養療法と低強度運動療法の併用は,全身性炎症を抑制し筋力を改善する可能性が示唆された.
|