Research Abstract |
健常成人6名を対象とし,把持力100%に至るリニアランプ負荷時の深指屈筋(FDP),浅指屈筋(FDS)の筋電図を導出した.測定肢位は,肩関節やや外転位,肘関節90度屈曲位,前腕回外位とした.手関節は,背屈30度,掌背屈0度,掌屈30度の3肢位を設定した.リニアランプ負荷課題では,握力が5秒間で最大値に達するように設定し,モニター上に標された直線的基準線に張力信号を追従させるよう視覚的にフィードバックしながら力を発揮させた.FDS,FDPの筋電図は,それぞれ左環指FDSと尺側FDPの筋腹から双極ワイヤー電極で導出した.ワイヤー電極は25ゲージのカテラン針を用いて刺入した.電極留置部位の確認は,刺入したワイヤー電極を利用した電気刺激で行い,当該筋のみに収縮が確認できた場合は,そのまま留置した.導出した筋電図は,各手関節肢位において把持力20%ごとに全波整流し,筋電図積分値を算出した.算出した筋電図積分値は,最大活動量で正規化し,%IEMGを求めた.%IEMGは負荷強度間および手関節肢位間で比較した. その結果,リニアランプ負荷時の筋活動量は,両筋とも負荷の増大に伴い有意に増加した(P<0.01).その筋活動量の増加パターンは,FDPは直線的であったが,FDSは最大負荷の40%までは少なく,60%からは急峻に増加し,80~100%までの筋活動の変化量は60%以下のものに比べ有意に大きかった(P<0.05).手関節肢位による筋活動の違いは,認めなかった. 本研究により,FDSの筋活動様式はFDPとは異なり,軽い負荷では筋活動が極めて低いことが判明した.また,この筋活動特性は手関節肢位で影響されないことが明らかになった.
|