2007 Fiscal Year Annual Research Report
成熟後および発育期における運動習慣が小脳シナプスの機能と運動スキルに及ぼす影響一
Project/Area Number |
19500494
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳原 大 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (90252725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿澤 昌 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (40291059)
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Keywords | 小脳 / 運動スキル / 運動習慣 / シナプス形成 / 脳・神経 |
Research Abstract |
成熟したマウスにおいて、延髄下オリーブ核を起始核とする登上線維がら小脳プルキンエ細胞へのグルタミン酸作動性の興奮性入力を、グルタミン酸受容体拮抗薬を用いて約1週間持続的に阻害すると、形態学的にはプルキンエ細胞に絡みつくように形成されている登上線維が退縮し、生理学的には登上線維終末からのグルタミン酸の放出が減弱される。この事実は、小脳による運動スキルの獲得、運動誤差情報の情報伝達に必要な登上線維からプルキンエ細胞へのシナプス結合およびシナプス伝達は成熟後も固定・不変的なものではなく、活動依存的に変化することを示唆している。ところで、生活不活発病とは日常生活が不活発なことが原因で、心身の生理的機能の多くが低下することであり、学術的には廃用症候群と言われている。成熟し既に脳における神経回路が一旦完成し、固定化された後でも、このような廃用症候群や慢性的な運動不足により運動の学習機能ならびに運動スキルの低下が生じるが、その原因の1つとして、下オリーブ核・登上線維一プルキンエ細胞シナプスの機能低下が生じているのではないかと考えられる。そこで、本研究課題では、成熟後の廃用症候群・不活動を模擬したモデル動物においては、下オリーブ核・登上線維一プルキンエ細胞シナプスの機能とそれらが関係する運動スキルがどのように影響されるのか明らかにすることを目的とした。平成19年度は下オリーブ核・登上線維系の運動スキル等における役割を明らかにする目的で、成熟したマウスを用いた実験において、下オリーブ核の薬理学的破壊により、下オリーブ核・登上線維が歩行制御のみならず、恐怖条件付け徐脈の発現に重要な役割を果たしていることが判明した。しかしながら、廃用症候群・運動不足モデルとして、狭小ケージ内で4週間飼育した成熟マウスの運動スキル、登上線維の形態には顕著な影響は観察されなかった。そこで、平成20年度は不活動による廃用性筋萎縮がマウスよりも明白なラットを実験動物として用いて研究を行う。
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