2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19500496
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小田 伸午 Kyoto University, 高等教育研究開発推進センター, 教授 (10169310)
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Keywords | 姿勢制御 / 反射 / 予測 |
Research Abstract |
本研究の目的は、高齢者や神経系や運動機能に疾患を持つ人々にとっては大きなリスクとなりうる歩行中の踏み外しに対する姿勢制御を明らかにすることであった。踏み外しでは他の外乱と異なり、踏み外した瞬間に下肢に新たな外力が加わることがないため、フィードバック機構とフィードフォワード機構の両方が重要な役割を果たす、ということが前年度までに示唆された。2008年度はさらに議論を深め、予測不可能な踏み外しに対して、1.予測された感覚入力と実際の感覚入力の差に対する下肢筋の反射、2.踏み外しに伴って乱れた歩行リズムのリセット、3.踏み外した穴から足を抜くための下肢の屈曲、という三段階の機能的な応答によってバランスを回復することが明らかとなった。この成果をまとめ、Gait and Posture誌(2009年)に発表した。本年度はさらに研究を進め、踏み外す可能性があるかもしれない、という明示的な事前知識がある際の姿勢制御ストラテジを調べる実験を行った。その結果、踏み外す可能性を知っていた場合、着地前から筋活動のパターンを変化させ、通常の歩行よりつま先を下げた着地を行うことが明らかとなった。これは、踏み外した後に起こる姿勢制御活動を先取りするものと考えられる。2009年3月には、この成果を国内の学会で発表した。 以上のように本研究は、ヒトは絶えず次の着地に関する感覚入力を予測しながら歩行をしており、それが外乱発生時の姿勢制御に重要な役割を果たす、ということを明らかにした。この知見は運動制御研究において新しいコンセプトであるだけでなく、歩行機能のリハビリテーションなどにおいても有用な知見であると考えられる。
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