2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19500506
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
石田 智巳 Wakayama University, 教育学部, 准教授 (90314715)
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Keywords | 佐々木賢太郎 / 体育実践 / 生活綴方的教育方法 / 作文教育 |
Research Abstract |
本研究の目的は,佐々木賢太郎の1960年頃までの体育実践観とその変容を明らかにすることである。特に,当該年度の目的は以下の通りである。「佐々木によって1953年度(1954年3月)までに書かれたすべての資料から,『生活綴方』や『作文』という『書く』ことに関する記述を抜き出す。そして,時系列ごとの変化と,これまでの研究で明らかにした実践観の変化との対応関係を見る。」 2007(平成19)年度に明らかになったことは,まず佐々木にとっての「生活綴方」は,紀南作文教育研究会が『やまびこ学校』(無着成恭)や理論的には国分一太郎の影響を受けたことと関連が深い。それはアメリカによってもたらされた日本の「新教育」への思想的・実践的な批判,そして,そのアンチテーゼとしての愛国心の昂揚から,特に戦中に国家によって弾圧された方法に対して着目したのであった。ただし,国分一太郎や今井誉次郎の作文や綴方という術語に対する思い入れの違いの影響もあり,佐々木においてはあまり言葉が厳密に区別されていないことが明らかになった。また,研究対象とした1954年頃までの佐々木の綴方の実践自体は,生活の記録を書かせることが中心であった。そのため,生徒や家庭,地域に入ろうという姿勢が見られるものの,体育実践に関してはようやくその方法が活かされはじめた時期だともいえる。体育授業と綴方を結びつけたのは,やはり『体育の子』実践の初期の頃,すなわち1952年頃の実践であったといえる。ただし,この時期は地域の親に綴らせるという実践は行われていない。やはり萌芽的な時期であったといえる。
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