2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19500506
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
石田 智巳 Ritsumeikan University, 産業社会学部, 准教授 (90314715)
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Keywords | 佐々木賢太郎 / 生活綴方 / 子どもの認識 / 体育教育思想 / 生活指導 |
Research Abstract |
平成20年度は,まず佐々木の主著である『体育の子』(1956)実践を含めて1952年から1955年までに佐々木が残した実践報告をすべて年代別に並べ替えて,佐々木の実践の変化を時代別に区分した。そして,そのときどきに佐々木の生活綴方や子どもの認識へのまなざしがどのように変化したのかを明らかにした。 その結果,1.白浜中学校時代I(1952年4月から1953年1学期),2.白浜中学校時代II(1953年秋から1954年3月),3.岩田中学校時代(1954年4月から1955年)の3つの時代に区分した。1と2の時代区分は「生命を守る体育」に確信を持つ時期であり,2と3の区分は,温泉観光地から農村そして被差別部落のある学校に移った時期に当たる。 1の時代の特徴は,教科の内容の学習とは切り結ばない生活指導型の報告であった。これは「遅れた子どもを中心に据える」という生活綴方の一つのスタイルの影響と佐々木自身の技術指導中心型の教育の脱却から来ているのであった。2の時代の特徴は,教科の指導を中心に据えて,そこで認識形成を図ると同時に,集団作りにタンプリングが用いられるように,生活教科融合型の報告であった。また,依拠する認識論もプラグマティックなそれから,感覚-思考というリアリズムの認識論へと変化している。3の時期になると再び生活指導型の報告が多くなり,生活教科融合型も見られるが,教科型の報告は見られない。そして,子どもの問題の奥底にある生活の問題を綴らせてそれをクラス全体の問題としていく。さらに,リアルに生活や事象を見つめさせ,その背後にある社会の矛盾に目をむけさせ,変革の対象とすることを綴方を通して教えている。 以上のように,この時期の佐々木の綴方へのまなざしは,生活指導と教科指導の間を揺らいでいたと特徴付けることができる。従来の佐々木研究では大雑把に把握されていた佐々木の生活綴方へのまなざしを実証的に明らかにすることができた。
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Research Products
(1 results)