Research Abstract |
本年度は,運動トレーニングが汗腺機能に及ぼす影響とその性差を明らかにするため,イオントフォレーシス法を用いてアセチルコリン誘発性の直接刺激性発汗(DIR)および軸索反射性発汗(AXR)を,男女の運動鍛錬者(T群)31名〔女性17名,男性14名〕および同非鍛錬者(U群)38名〔女性25名,男性13名〕の4群間で比較検討した.DIRにおける発汗量(DIR_<SR>)・単一汗腺あたりの汗出力(DIR_<SGO>)は,男女とも前腕・大腿でT群がU群より有意に高く,T・U群とも女性が男性より有意に低かった.しかし,DIRにおける活動汗腺数は,前腕・大腿とも4群間で同等だった.運動トレーニングに伴うDIR_<SR>とDIR_<SGO>の増加の程度は男性より女性で小さかったため,DIR_<SR>とDIR_<SGO>の性差はT群がU群より大きくなった.VO_2maxとDIR_<SR>・DIR_<SGO>の間には男女とも前腕・大腿とも有意な正の相関関係がみられ,それらの回帰直線は女性が男性より下方に位置し,その傾きも小さい傾向だった.AXRでは,女性の最大発汗量(AXRmax)・総発汗量(AXRsv)で前腕・大腿ともT群がU群より有意に高く,発汗開始時間も前腕でT群がU群より早い傾向だった.一方,男性では大腿のAXRmaxでのみT群がU群より高い傾向を示した.AXRmaxは大腿で,AXRsvは前腕・大腿ともU群で女性が男性より有意な低値を示した.なお,T群のAXRには性差はみられなかった. 以上の結果,DIR(汗腺自体の要素を反映する)およびAXR(交感神経節後線維の要素を反映する)は,いずれも女性が男性より抑制され,男女とも運動トレーニングで改善されるが,その改善の程度には性差が存在した.すなわち,DIRの改善は男性で,AXRの改善は女性で顕著だったため,運動トレーニングに伴いDIRの性差は増大し,逆にAXRの性差はより減少することが示唆された.
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