Research Abstract |
本研究では,肥満に関連するβ3-アドレナリン受容体(β3-AR)遺伝子多型Trp64Argと脱共役蛋白質1(UCP1)遺伝子多型A-3826G,動脈硬化に関連するメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子多型C677T,高血圧に関連するアンジオテンシノーゲン(AGT)遺伝子多型Met235Thrの4種類を解析し,糖尿病患者を対象としたテーラーメイド栄養指導への利用を検討した。外来糖尿病患者165名(男性88名,女性77名,年齢59.2±12.4歳:平均±標準偏差)の血液からDNAを抽出し,PCR-RFLP法にて遺伝子多型を解析し,血糖,HbAlc,血清脂質,血圧,BMI,IMT(頸動脈内膜中膜複合体肥厚度)の臨床検査データとの関連を調べた。 β3A-R(Trp64Arg)とUCP1(A-3826G)の解析結果では,対象者の79%がβ3-ARまたはUCP1の変異多型を保有し,BMIが24.8±4.2kg/m^2と非保有者の23.0±4.2kg/m^2に比べ有意に高値であった。男女別に比較すると,男性では,変異多型保有者は24.8±3.4kg/m^2で,非保有者の22.9±3.3kg/m^2に比べ有意に高値であったが,女性では有意差はみられなかった。MTHFR(C677T)の解析結果では,動脈硬化のリスクを高めるTT多型は,対象者の10%が保有していたが,血糖,HbAlc,血清脂質,血圧,BMI,IMTにおいて,TT多型が及ぼす影響はみられなかった。AGT(Met235Thr)の解析結果では,対象者の62%が高血圧感受性であるTT多型を保有していた。血圧においてTT多型の保有者と非保有者に差はみられなかったが,女性のHbAlcにおいて,TT多型の保有者は8.7±1.8%と,非保有者の7.5±1.3%に比べ有意に高値を示した。
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