Research Abstract |
生体ゆらぎの存在は生物の有する通常機能の現れであり,機能の不全時にその大きさが減少したり,失われたりするとの見解が支持を得つつある.そこで本研究では,心拍動や脳活動に関わる各種生体計測データ(心拍数変動,血圧変動,心電図,脳波,脳磁図)に対して,カオス,(マルチ)フラクタル,ウェーブレットなどの非線形解析手法を駆使し,それらの結果の複合的な分析を通して,心機能と脳機能を中心とする生体機能の正常(健常)と異常(病態)の境界領域を判定しうる新しい健康指標とそれによる評価システムの構築を目指した.本年度は次の1,2に従って研究を遂行した. 1. 前年度までの解析結果に基づいて,各対象生体データごとに3つの手法の感度や有効性を吟味し,心拍動や脳活動の違いによる生体データ固有の性質との関連性や,それぞれの定量指標の複合による,正常(健常)と異常(病態),特にその移行期(潜在的中間状態)を判別しうる評価尺度(健康指標)の構成について検討した.その際,耐ノイズ性など各手法の実用面での性能限界についても議論した.2. ベイジアンネットによるマイニング法では,1. で確認された種々のパターン傾向を条件付確率分布としてテーブル表現することとなり,その点で自由度と柔軟性が高いことから,事例増加に伴うパターン複雑化への対処や知識ベースシステムへの実装が比較的容易であることが確認できた.また,変数(各手法の指標と機能状態)間の条件付確率,グラフ構造をニューラルネット等で学習・補間する方法を導入することで,推論による評価能力の向上を図ることができた.
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