Research Abstract |
加齢とともに大腿伸筋群の筋量は,他の下肢筋群に比して著しく低下する。そのため筋量の変化を,膝関節伸展筋力を測定し評価してきたが,近年では,膝痛や膝関節障害により,膝関節伸展筋力を測定できない高齢者が増加している。もちろんこの膝痛や膝関節障害も下肢の筋力低下が一要因となっているため,そのための運動介入も必要であり,またその評価も重要である。そのため,膝痛や膝関節障害を有した高齢者でも下肢の筋力を評価できる,閉鎖性運動連鎖による下肢筋力測定装置を独自に開発し,基礎データの収集を行い,新しい高齢者の下肢筋力評価スケールの策定を試みた。 40〜84歳の男女中高年・高齢者を対象に膝関節伸展筋力,下肢筋力,下肢筋量,歩行能力(歩行速度,歩幅および歩調の簡易測定),柔軟性(関節可動域),重心動揺などの測定を,運動介入(週2回3ヶ月間)の前後に実施した。 今回の短期間の運動介入の結果として,大腿および下腿筋量の有意な変化はみられなかったが,歩行速度,下肢筋力,足関節可動域に有意な改善がみられた。膝関節伸展筋力の変化はみられなかったが,歩行速度,下肢筋力,足関節可動域に有意な改善がみられたことは,下腿底屈筋群および足関節の柔軟性に改善がみられたことによる結果であると推察される。そこで,さらに下腿筋群の筋力向上ならびに足関節可動域の改善に効果的な運動プログラムを策定し,その効果を検証したところ,60歳代以上の被験者において,重心動揺値にも有意な効果がみられた。 以上のことから,大腿筋群の筋力低下がみられる高齢者では,下腿筋群の筋力ならびに足関節の柔軟性が,重要であることが示唆された。 今後は、下肢筋力測定装置に改良を加え,前述の効果をより反映できる評価スケールを確定できるよう測定データの蓄積と効果的な運動プログラムの策定をすすめたい。
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