Research Abstract |
【目的】双生児を用いた研究によれば,肥満発症には環境要因よりも遺伝的要因の影響が強いことが報告されている.しかし,わが国の肥満児出現頻度は30年間に約3倍増加している.この現象は,遺伝要因のみでは説明できず,過食や運動不足など環境要因の関与が推測される.そこで,遺伝性肥満・糖尿病モデル OLETFラットを用い,幼若齢期(ヒト小児期相当期)に,一定期間運動を行わせ,成熟期(壮年期)における内臓脂肪蓄積と耐糖能に及ぼす影響を調べた. 【方法】OLETFラットを対象に5〜20週齢までの15週間,回転ケージを用い自発走運動を行わせ,その後45週齢まで安静を維持させた.46週齢時に,骨格筋(大腿四頭筋,腓腹筋,ヒラメ筋,前脛骨筋,長指伸筋,足底筋),皮下脂肪,腸間膜脂肪,副睾丸周囲脂肪および後腹膜脂肪を摘出し重量を測定した.次いで,皮下脂肪,副睾丸周囲脂肪の脂肪細胞数およびサイズを調べた.また,5,20および45週齢時にブドウ糖負荷試験を行い、糖・脂質代謝指標の他に血清レプチン濃度を測定した. 【結果および考察】46週齢時の内臓脂肪重量は,対照群(73±5.0g)と比較し,小児期運動群(46±7.4g)では有意に低値を示した.ブドウ糖負荷試験(45週)における空腹時および120分の血糖値は,対照群(122±9.2,246±46.lmg/dl)と比較し,小児期運動群(102±12.3,128±38.8mg/dl)では有意に低値を示した.また,46週齢時の血清レプチン濃度は,対照群と比較し小児期運動群では有意に低値を示した.これらの結果から,小児期の習慣的運動は,壮年期における内臓脂肪の蓄積および耐糖能障害の進展を抑制しうることが示唆された.
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