Research Abstract |
【目的】本研究は,有酸素運動が脳神経機能に及ぼす効果の持続性を検討する。脳神経機能の情報処理過程を反映する事象関連電位P300(P3)及び反応時間(RT)は,有酸素運動後に短縮するという報告がある(yagi,2003)。しかし,その効果の持続性を検討した報告は見当らない。本研究は有酸素運動後に,聴覚オドボール課題に対するRTと,標的刺激毎に発生するP3成分を解析し,運動後のRTの短縮とP3潜時の短縮,振幅増大を確認した上で,その効果の持続性を検証する。更に一般非運動群と運動群のRT,P3の比較から,日常的運動の効果を検討する。【方法】健康な一般女子大生22名,平均年齢21.8±0.4歳,右利き(内運動部女子大生7名,21.1±0.4歳,右利き)を本研究の対象とした。運動習慣の無い一般女子大生8名は,自転車エルゴメータによる有酸素運動(心拍数120拍/分)を30分行った。運動前コントロール期,運動終了直後,1時間後,2時間後,2日後,4日後に,安静状態で15分間の聴覚オドボール課題(標的2000Hz音20%,非標的1000Hz音80%)を行わせた。P3は加算平均P3波形を参照し,EEG上のP3を同定し,各成分のピーク潜時と振幅,RTを解析した。【結果】安静コントロール値に比べ,有酸素運動直後のRT短縮とP3潜時短縮,P3振幅増大は有意(p<0.05)であった。この運動の効果は,運動直後をピークに,RT短縮とP3振幅増大は2日目まで有意に持続した。一般群に比べ,運動群はRTとP3潜時が有意に短く,P3振幅が有意に高かった。【考察】有酸素性運動は,情報処理のスピードを速くし,中枢神経系を活性化し,その効果は持続性があると考える。さらに,日常の運動は,中枢神経系の活性化を持続させ強化する可能性があると考える。
|