2008 Fiscal Year Annual Research Report
子どもの「居場所」形成の法則と成立条件解明に関する実証的研究
Project/Area Number |
19500631
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
中島 喜代子 Mie University, 教育学部, 教授 (70024487)
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Keywords | 子どもの居場所 / 個人的居場所 / 社会的居場所 / 居場所の補完構造 / 居場所の拡張型補完 / 居場所の代替型補完 |
Research Abstract |
小学校5・6年生、中学校2年生、高校2年生を対象に、三重県津市に立地する学校に地域を限定して、家庭、学校、地域という生活場面全体について調査を実施することによって、「居場所」形成の法則を年齢段階別に諸側面から解明し、さらに「居場所」の問題点をとらえて改善方策を提示することを目的とした。その結果、以下の知見を得た。 1、家庭が個人的居場所の中心であり、年齢段階が上がるにつれて、家庭における個人的居場所の必要性が大きくなるが、家族関係や心理状態が良くない中学生では、心理状態を回復するための居場所が不十分である。したがって、特に中学生には、学校や地域に個人的居場所を確保する必要がある。 2、学校が社会的居場所の中心になっているが、個人的居場所の所有率が低い。年齢段階が上がるにつれて、個人的居場所の所有率と評価が低くなるが、要求は高くなる。したがって、中・高生には、学校において個人的居場所となり得るようなリフレッシュルームや多目的室といった自由に使用できる空間を確保する必要がある。 3、地域は個人的居場所、社会的居場所ともに、家庭や学校より所有率は低く、評価も低いが、要求はかなり存在する。また、地域における居場所の中心は、友達の家であり、公共施設の利用が少ない。特に、中学生ではその傾向が顕著であり、公共施設の充実・利用の促進と並行して、地域における活動や交流を通した人間関係づくりが必要である。 4、生活全体でみると、家庭・学校・地域それぞれにおける居場所の所有は他の場所での居場所の所有につながっており、拡張型の補完関係がある。代替型補完では、年齢段階が上がるにつれて、家庭に個人的居場所を所有していないものは、学校や地域において個人的居場所を補完している。また、小学生は学校や地域に社会的居場所を所有していない場合でも家庭で補完しているが、中学生段階になると家庭での補完は困難になる。したがって、中・高校生のための社会的居場所を地域に確保する必要があり、そのための公共施設を整備する必要がある。
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