2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19500766
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
林 慶一 Konan University, 理工学部, 教授 (10340902)
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Keywords | 化石化作用 / 実験教材 / 貝形虫 / 河川の流速 / 非海生堆積物 / 化石の保存状態 / 白亜紀 |
Research Abstract |
従来,長大な地質学的時間を経て形成される化石は,その過程を学習するための実験教材の開発は困難と考えられてきたが,筆者は現生および化石の非海生介形虫を素材にすることで解決の方向を見いだし,平成19年度の成果をふまえて平成20年度は次の5つの研究を行った。 1.実験素材として利用可能な現生の介形虫を探索するため,日本各地の淡水生・汽水生の現生介形虫の分布・生態を調査した(福井県北潟湖周辺,紀伊半島海岸部・内陸部の湖沼・河川,九州福岡市内の湖沼等)。その結果,様々な環境から底生および間隙生の多様な介形虫を見いだした。 2.化石化作用の第一段階である軟体部の腐敗と硬組織の残留について,上記の各地で採集した種を飼育し,死後の変化の違いを調べた。その結果,軟体部の腐敗過程に属や種による差は少なく,(1)内蔵の腐敗・膨張と閉殻殻の弛緩による殻腹縁部の開口→(2)開口部からの腐肉食性の微生物の進入による軟組織の消失→(3)殻などの硬組織の化学的変化による劣化・分解という順で進むことが明らかとなった(日本生物教育学会で口頭発表)。 3.化石化作用の第三段階である埋積後の続成過程について,兵庫県の白亜系篠山層群の2層準さらに石川県の手取層群の間で比較して調べた。その結果,介形虫自体の石灰分の量に関わらず,堆積物中の石灰分の量が化石の石灰分の保存に寄与していることが明らかとなった。 4.以上の当初の計画に基づく研究に加えて,化石化作用の第二段階である運搬過程の研究を,兵庫県武庫川および関東平野の渡良瀬川で発展させた。その結果,粗粒堆積物の土石流による運搬および河川水の大規模な地下浸透を定量的に把握した(日本地学教育学会で口頭発表)。 5.また,教材を適切に把握するための教員の資質(甲南大学教職センター年報・研究報告書)と,科学的な方法の小学校理科への導入(理科教育学会発表論文集)を関連研究として行った。
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