Research Abstract |
従来,長大な地質学的時間を経て形成される化石は,その過程を学習するための実験教材の開発は困難と考えられてきたが,筆者は現生および化石の非海生介形虫を素材にすることで解決の方向を見いだし,平成19,20年度の成果をふまえて平成21年度は次の4つの研究を行って,化石化教材を完成した。 1.日本各地の湖沼・水田・河川などに生息する非海生介形虫の種類と生態について更なる調査を行い,学校現場で化石化教材に用いることのできる現生の素材としてHeterocypris属,Stenocypris属,Dolercocypris属,Cypridopsis属など多数の貝形虫が有効であることを明らかにし,有効な採集方法等を見出した。 2.現生介形虫の採集・飼育から,遺骸の化石化への段階的変化の追跡,その延長上での化石標本の観察法に至るまでを適切に配列した,化石化作用の実験教材を開発した。特に化石の運搬作用に関わる河川作用については堆積学的な最新の知見を現在の理科教育に移転するための成果を発表した(日本地学教育学会誌)。 3.2で開発した実験教材の有効性を検証するため,高等学校理科教員を対象にした研修で実践して,実用性を確認すると共に,教員からの評価を受けた。その結果,学校現場での教材としての有効性が高いことを確認し(地学教育学会で口頭発表),残された問題点等を把握して改善し,教師用・生徒用の実験マニュアルを作成した。 4.知名度の低い貝形虫及び貝形虫化石を教育現場に広く普及させるために,児童生徒の興味関心の高い恐竜化石などの年代が,共産する貝形虫化石によって決定できることなどの例を示した(日本地質学会で口頭発表,北京自然史博物館紀要および東京学芸大学研究紀要で論文発表)。
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