Research Abstract |
本研究では,高専低学年の学生に,数式の変形過程を1つ1つ記述させ,数式のハンドリングを正確に行えるよう支援することを目的として,基礎数学の学習において最も重要な,論理的思考力を養うためのe-ラーニングシステムの設計と開発を行うことが目的である. 本研究の目的を達成するため,本研究の1年目にあたる平成19年度は,高専低学年における数学教育の実態調査,数学教育に関する取り組み事例の調査を行った.更に,それらの調査結果を考慮しながら,研究分担者が専門とするパタン認識・自然言語処理の技術を踏襲した,学習システムの試作についての研究を行った.高専低学年における数学教育の実態調査では,既に科目担当者・担任が個々に調査した過去のデータや,これまで蓄積された学生の答案から事例を集めることで,状況を分析することができた.また,他高専等の取り組みについては,教育関係の学会で数多く事例が紹介されているが,e-ラーニングと数式ハンドリングとを結びつけた事例はなく,本研究の位置づけと有用性を改めて整理することができた.システム開発については,当初,1年目は認識エンジンに関する部分の試作・評価までを目標としていたが,当初の予定よりも研究が進み,現在,数式意味解析部の実装・評価まで終えており,これらの成果は2008年3月の学会で公表済みである.現在,入力文字の認識精度は約95%であり,意味解析部による数式解析についても概ね良好な成果が得られているが,予期しない式変形が記述された場合,十分な解析・指導ができないことがあり,今後はこれらの点について調査・改善を図って行く必要がある.また,次年度は,システムの要素技術の性能ではなく,システムの教育的効果という側面からシステム評価・改善を行ってゆく予定である.
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