Research Abstract |
本研究では,高専低学年の学生に,数式の変形過程を1つ1つ記述させ,数式のハンドリングを正確に行えるよう支援することを目的として,基礎数学の学習において最も重要な,論理的思考力を養うための基礎数学学習支援システムの設計と開発を行うことが目的である. 本研究の目的を達成するため,最終年度にあたる平成21年度は,対象とする数式の範囲の拡充,それらの数式を対象とする等価性判定アルゴリズムの検討,および,システム全体の再構成を行って,研究成果をまとめた.対象とする数式に関しては,これまでの一変数多項式に加え,分数多項式,特殊関数(三角関数・対数関数など),一部の微分・積分が扱えるように拡張した. これに伴い,一変数多項式にのみ対応可能であった等式の正しさを自動判定するアルゴリズムも拡張する必要があった.しかし,分数式の導入により,従来のような標準形を規定する方式では必ずしも等価性の判定はできないため,多項式の因数分解を行う手法についても検討した.一般に,数式の因数分解は因数定理から手掛かりを得て行う場合も多いが,一変数多項式の因数分解には限界がある.そのため本研究では,基礎数学であること(あまり中途半端な因数は出てこないこと)を前提とした,独自の因数分解アルゴリズムを考案した.また,等号で結ばれた数式の等価性を自動判定するとともに,その式の導出が,解に辿り着くための式変形として妥当かどうかを判定するために,導出ステップ数という概念を導入し,式変形の妥当性判定を行う手法を提案した.最後に,これらの研究成果をまとめて一つのシステムとして構築した.検証実験を行ったところ,人間が介入して誤認識修正を行うケースもあるが,等式の等価性判定についてはほぼ100%の精度で自動判定できることが分かった.今後は,システムの試行を継続し,データを蓄積した上で,より良いシステムへと改良を重ねて行く予定である.
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