2009 Fiscal Year Annual Research Report
戦間期における日本の化学研究の展開について 史的な研究
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19500855
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
梶 雅範 Tokyo Institute of Technology, 大学院・社会理工学研究科, 准教授 (00211839)
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Keywords | 日本化学史 / 野副鐵男 / 眞島利行 |
Research Abstract |
2009年7月に化学史学会の年会・研究発表会で、1926(大正15)年以来22年間滞在した野副鐵男の台湾時代、とくに台北帝国大学での台湾ヒノキという台湾特産の樹木から単離されたヒノキチオールの研究について発表した。野副の研究が、東アジアの特産物に含まれる有機化合物の構造と性質を最新の世界レベルの研究手法で解明するという、眞島利行以来の日本の有機化学の研究戦略の一つの到達点であることを明らかにした。 東北大学史料館において、近年公開された野副鐵男の師、眞島利行の日記(マイクロフィルム版)の完全な複製をとり、すべて印刷して年代別に製本して、本格的な解読を始めた。眞島利行日記は、眞島が新設の東北帝国大学理科大学教授として仙台に着任した1911年(明治44年)から3年後の1914年(大正3年)から始まり、亡くなる3年前の1959年(昭和34)に至るものである。これは、眞島40歳から85歳に至るまでの日常を、詳細に知ることのできる希有の史料である。眞島は、日本の有機化学の制度化にもっとも貢献し、また日本の有機化学とくに天然物有機化学の伝統の創始者とも言うべき人物で、その日記の分析は、日本化学史の解明に対してきわめて大きな貢献をするものと考えられる。今年度は、日記のうち、大正年間部分の解読を行った。次年度も日記本文の解読を続ける。 本研究に関連する発表として、6月にロシアのサンクト・ペテルブルク大学哲学部が開催した国際会議で、日本の科学伝統について発表し、8月にはハンガリーのショプロンで開かれる国際化学史学会で明治・大正期の日本における周期律の受容に関する発表をした。これは、単に日本科学史に関する発表というだけでなく、国際比較研究のプロジェクトの一環で、来年度にはそのまとめを考えている。
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