2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19500856
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
小川 眞里子 Mie University, 人文学部, 教授 (00185513)
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Keywords | リービッヒ / コレラ / シティコーポレーション / テムズ河 / 下水道網 / 屎尿の再利用 / 肥料 / 農芸化学 |
Research Abstract |
本研究は、イギリス19世紀の衛生政策に関係する1次資料の掘り起こしを前提とする研究である。科研費のおかげで、本年度もイギリスへ資料収集に出かけることが出来たのは、研究の進展にきわめて大きく役立った。 コレラの流行に伴う衛生意識の高まりは、日本でも少数ながら研究が進められているが、コレラの元凶となった上水と下水の混在を解消する事業については、それほど明らかにはされてきていなかった。本研究では、化学分野ではよく研究されてきているドイツの有機化学者リービッヒとイギリスとの関係を洗い直し、彼の農学方面での貢献を明らかにするとともに、テムズ河の汚染に深刻な影響を与えてきた屎尿の放流について、リービッヒがかかわった指導と改善を明らかにした。 本年度解明できた衛生政策の政治的な側面は、『化学史研究』に投稿し査読を終えて、現在掲載待ちの状況である。利権の絡む大きな公共工事には、政治的な駆け引きが付き物であることは、いつの時代もどの国においても変わらないなということを明解にできたと思う。とくに、科学者がどの政策を支持するかによって、その後の政策実施に大きな影響があることを認識すべき重要事例を発掘できたと考えている。
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