2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19500871
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
南 武志 Kinki University, 理工学部, 准教授 (00295784)
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Keywords | 遺跡朱 / 辰砂鉱山 / イオウ同位体比分析 / 産地推定 / 中国陝西省鉱山 / 長崎県波佐見鉱山 / 鉛同位体分析 / 微量元素 |
Research Abstract |
弥生時代後期から古墳時代に祭礼儀式として遺跡内部の遺体の装飾や壁に彩色する目的で赤色顔料の朱(別名辰砂、硫化水銀)が用いられた。この朱の産地同定が可能になればちょうど古代大和王朝誕生前後の時期と重なることから、大和王朝の影響下にあるか、あるいは中国から直接影響を受けているかが判明すると考え、朱の産地同定を試みた。朱に含まれるイオウの同位体を調べると中国大陸産と日本産で明らかな違いがあった。しかし、中国大陸には4つの大きな辰砂鉱脈が存在することが分かっているので、その中でも古代中国で稼動していたと思われる3つの鉱脈の内、陝西省と雲南省を訪問し、古代日本へもたらされた可能性について調査した。他の1鉱脈は貴州省であり、以前に調査している。その結果、陝西省旬阻県には古の坑道跡が残っており、近くで今も豊富な埋蔵量を誇り稼動している辰砂鉱山を訪ねることができた。そこでは地下坑道から朱鉱石の採取も許され、帰国後にイオウ同位体分析を行った結果、北九州から山陰一帯の有力者遺跡で使用された朱と類似の値を示した。当地は古代都の長安より徒歩1週間の距離にあり、当時の皇族が納めていた重要な拠点であった。一方、当時の属国であり辰砂鉱山の存在が知られていた雲南省鉱石は、帰国後のイオウ同位体分析結果から、古代日本で使用した可能性が低いと判断した。次に弥生後期の北九州で日本産辰砂鉱石が使用された可能性を調べるため、長崎県の旧鉱山である波佐見鉱山と江戸時代に開発された同県相浦鉱山を巡検した。両鉱山の場所は今回はじめて特定できたが、採取した鉱石のイオウ同位体分析結果から当地の辰砂鉱石が北九州地域の遺跡で用いられた可能性は低いと判断した。イオウ同位体分析は朱の産地推定の強力な武器であるが、確実性を高めるため地域によって異なる値を示す鉛同位体分析も試みている。
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