2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19500871
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
南 武志 Kinki University, 理工学部, 准教授 (00295784)
|
Keywords | 遺跡朱 / 産地同定 / イオウ同位体比分析 / 中国陜西省辰砂鉱石 / 三重県丹生鉱山産辰砂鉱石 / 奈良県大和水銀鉱山産辰砂鉱石 / 鉛同位体比分析 / 2次元図 |
Research Abstract |
20年度は、19年度に採取した中国陜西省の辰砂鉱山鉱石の分析と、弥生時代後期と古墳時代黎明期の遺跡出土朱の分析を行った。陜西省鉱山は秦時代にさかのぼる可能性が高い地域に存在する鉱山であり、そのイオウ同位体比は貴州省のものと異なり、弥生後期日本海側遺跡出土朱の値とほぼ重なる値を示した。従来、貴州省産と考えられていた朱も陜西省産の可能性が高くなった。惜しむらくは、20年度に四川省辰砂鉱山の訪問を企画していたが、地震の震源地近くであったため中止せざるを得なかった。一方、イオウ同位体比と2次元マップを作成する計画は、鉛同位体比分析が順調に進み、朱においても混在している微量鉛から鉛同位体比分析を行うことが可能であり、産地が判明している日本産辰砂鉱石と中国産辰砂鉱石から明らかな違いを観察することが出来た。この結果から、いくつかの遺跡出土朱からも中国産と日本産の区別が可能と思われるデータを得ており、イオウ同位体比分析と鉛同位体比分析の2次元マップの作成が近い将来可能である。このことにより、ますます信頼性の高い遺跡出土朱の産地推定が行えると確信している。本研究成果はいくつかの論文と学会発表で公表しているが、今後研究計画に記載したように文化財研究者へ広く情報提供していく予定である。
|