2008 Fiscal Year Annual Research Report
燻蒸剤等各種殺虫・殺菌処理が文化財のタンパク質材質へ及ぼす影響の科学的検討
Project/Area Number |
19500873
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Research Institution | National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo |
Principal Investigator |
木川 りか National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo, 保存修復科学センター, 生物科学研究室・室長 (40261119)
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Keywords | 保存科学 / 燻蒸剤 / 生物劣化 / 文化財科学 |
Research Abstract |
文化財の殺虫・殺菌処理には、新規燻蒸剤や、薬剤を使用しない殺虫方法などがあるが、殺虫・殺菌は薬剤の化学反応や環境の物理的条件の変化によって行なうため、場合によっては、文化財の構成材質に影響を及ぼすこともある。文化財や資料を構成するタンパク質材質は、わが国の伝統的な絵画などに用いられている絹や膠のほか、羊毛、皮革、毛皮類、動物標本類、写真資料に使用されているゼラチンなど、きわめて多岐にわたるが、これまでタンパク質材質に対する燻蒸剤の影響については、分子レベルで詳細な物性の変化などを系統立てて綿密に検討した研究例はほとんど見当たらない。本研究ではこれらタンパク質材質に及ぼす影響を系統立てて検討することを目的としている。わが国で今後使用される可能性のある、各種殺虫、殺菌処理、例えば、臭化メチルの代替燻蒸剤、ヨウ化メチル、酸化エチレン製剤、フッ化スルフリル、酸化プロピレン、および従来使用されてきた臭化メチル、臭化メチル・酸化エチレン混合製剤、さらには、窒素等による低酸素濃度処理,二酸化炭素処理,低温処理,高温処理などの薬剤を使用しない文化財の殺虫処理法について、自然誌標本のタンパク質、絵画材料の膠、絵絹などに及ぼす影響を検討してきた。今年度は、主にIR分析による検討を行った。その結果、これまで電気泳動やDSC(Differential Scanning Calorimetry)などで、大きな変化がみられていたフッ化スルフリルで燻蒸した筋肉標本については、IRでも変化が検出された。一方で、膠、絹、カゼイン、皮革などについては、複数回IRによる測定を繰り返して検討したが、とくに顕著な変化は検出されず、タンパク質の種類や、材質の加工法の違いなどによって、燻蒸剤などの影響の多少は異なることが明らかになった。
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