2008 Fiscal Year Annual Research Report
大人と子供における音声知覚単位と文字読解の単位の解明-視線動向分析-
Project/Area Number |
19509004
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
西尾 由里 Ibaraki University, 大学教育センター, 准教授 (20455059)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 節子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (60305688)
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Keywords | 音声知覚単位 / 視線行動 / 文字認識単位 / 子供の第二言語習得 / マルチメディア |
Research Abstract |
英語音声の知覚・産出において、母語話者は音節を単位とするのに対し、日本人は母語である日本語の音節構造、即ちモーラ(CV、子音+母音)を単位とするため、英語習得が阻害される(西尾、2007)。本研究の最終目的は、この問題を、音声の知覚・産出・文字認識の3つの過程において、音声と視線行動の両面から分析し、その解決をはかるe-learning教材を開発することにある。20年度は、下記の実験を行い、結果をまとめた。 1. 音声の知覚に関して、オンラインとオフラインの実験を行った。両実験において、日本人学習者は、英語音声をモーラで知覚していることが確認できた。これにより「意識的・無意識的」知覚単位のメカニズムが明らかになった。 2. 英語母語話者と日本語母語話者の文字・音声の認識を調べた。その結果、次の点が明らかになった。(1) 英語母語話者は、文字を音節あるいは単語で認識し、音声を音節で知覚・産出する。しかし、(2) 日本語母語話者は、文字をモーラあるいは音素で認識し、音声もモーラで知覚・産出する。 3. 発達段階(大人と子供)に応じた学習教材を作成し、その効果を調べた。(1) 大学生実験 : 音節習得を促進するアクセント表示を考案し、E-learning教材として提示したところ、発音および視線行動の単位が、モーラから音節に変化した(西尾・宮本, 2008 ; Nishib, Miyamotb, & Racine, 2008)。(2) 小学生実験 : 英語未学習者に対し、文字と同時にモデル音声を提示する訓練後に、知覚と産出(発音)を調べた。その結果、産出では母音挿入の減少がみられた。知覚(視線行動)においても、音節単位が確認できた。 集約すると、(1) 日本人の場合、発達段階に関わらず、英語の知覚、産出・読みはモーラを単位としている。(1) モーラに基づく母語のnegative transferは、アクセント表示の工夫や音声・文字の同時提示などの訓練により、音節分節に変換・改善しうる。 本研究の知見は、早期英語教育の教材作成に大いに貢献できると考える。
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