Research Abstract |
降水中水銀および大気中ガス状原子水銀の多点観測を開始するとともに,大気中粒子状水銀について種々の情報を収集することに主眼をおき研究を進めた。【多点観測】降水を網羅的に採取することを目的とし,市販の感降雨雪器,リニアアクチュエーター,ディップタイマー,リレーを用いて自動降雨採取装置を自作した。これを富山大学(富山県富山市),富山県立大学(富山県射水市)の2点(定点)に設置し,降水を採取して,これに含まれる全水銀を定量してデータを蓄積した。また,申請者らが開発した粒子カットフィルターを接続した水銀捕集管を用いる方法により,富山市と射水市とで大気中ガス状原子水銀を計測し,そのデータを蓄積した。大気中ガス状原子水銀においては,採取時期によりそれほど大きな濃度変動は認められなかったが,富山市と射水市とでは水銀濃度に若干の差異が認められることが明らかとなった。降水においては,比較的大きな水銀濃度変動が認められたが,これには総雨量なども関与していると考えられることから,現在湿性沈着量に変換して評価しているところである。また,富山県内を中心に降水採取地点5点程度を選定した。現在,これら地点において降水を採取し,全水銀濃度を測定するための試料採取方法,保存方法,輸送(回収)方法について検討を進めている。【粒子状水銀】富山大学と富山県立大学とで,ローボリュームエアーサンプラーを用いて大気中エアロゾルを分級捕集し,粒子径ごとの水銀を定量したところ,採取時期により分布が大きく異なることが明らかとなった。各粒子径における水溶性主要成分の分布と比較したところ,ある採取時期の水銀分布はNa, C1との,またある時期ではNH4, SO4などとの相関が認められた。この点については,今後さらにデータを蓄積し,解析を進めていく予定である。
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