2009 Fiscal Year Annual Research Report
琵琶湖における鉄(II)の動的濃度変化を支配する環境因子の解明
Project/Area Number |
19510010
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
丸尾 雅啓 The University of Shiga Prefecture, 環境科学部, 准教授 (80275156)
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Keywords | 環境分析 / 地球化学 / 陸水学 / スペシエーション / 鉄(II) |
Research Abstract |
平成21年度は琵琶湖において水試料を採取し、本研究で用いているフェロジン比色法とルミノール化学発光法を用いて、鉄(II)の測定を同時におこなった。両方法の測定結果は大きく異なり、フェロジン比色法の方が一桁ほど高い値を示した。これらの二つの方法は、鉄(II)のうち異なる化学種を測定している可能性があり、分析法による違いを今後詳細に検討する必要があることが明らかになった。 複数回の琵琶湖観測結果から、光化学反応の影響を受けないと考えられる水深10m以深においてFe(II)/Fe(III)が腐植様物質と正の相関を示し、腐植様物質によるFe(II)の安定化が示唆された。これに関して人工琵琶湖水を用いてこれにFe(II)と琵琶湖深水層水より抽出した溶存腐植物質を添加し、定温実験においてFe(II)の酸化速度を評価した。その結果、腐植物質が存在することによりFe(II)の酸化が遅くなることが示された。同様に腐植物質に加えてFe(III)を添加した場合もFe(II)の酸化が抑制された。琵琶湖の腐植物質はFe(II)とある程度強力な錯形成能をもち、Fe(II)の酸化を抑制すると推測される。 一方で太陽光による光化学反応の影響を受ける水深0-5mにおいてはFe(II)とFe(II)/Fe(III)は腐植様物質と負の相関を示した。溶存有機物の光分解にともなうFe(III)の還元によるものと考えられるが、鉄-腐植様物質の錯生成が反応に関与するのであれば、むしろ正の相間を示すものと考えられる。このことから、琵琶湖表層におけるFe(II)生成量は、紫外線による直接還元、あるいはヒドロキシラジカルの生成量に依存し、同様の因子による腐植様物質の蛍光発色団の構造変化が同時に起きているものと考えられる。
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Research Products
(5 results)