2008 Fiscal Year Annual Research Report
太平洋中央域および東太平洋赤道域南北縦断間隙水化学成分のマッピング
Project/Area Number |
19510014
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
加藤 義久 Tokai University, 海洋学部, 教授 (00152752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南 秀樹 東海大学, 生物理工学部, 准教授 (60254710)
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Keywords | 太平洋中央域 / 東太平洋赤道域 / 南北縦断測線 / 生物生産 / 堆積物間隙水 / 海底溶出 / ケイ酸塩 / 溶存バリウム |
Research Abstract |
本研究の目的は,海底堆積物中の粒子と間隙水間における物質の変質と移動を明らかにして,古海洋環境のにおける生物生産変動のプロキシーとなる成分の地球化学的特徴を把握することにある.特に,生物起源ケイ酸塩およびバリウムの粒子に注目する.本年度の成果を以下に要約する. 1.太平洋中央域における深海の表層堆積物コア中の間隙水の化学組成を調べた.高緯度域および赤道域においては,間隙水中のバリウムおよびケイ酸塩の濃度は底層水と比べて高く,また,他の中緯度海域の平均値と比較しても高かった.すなわち,生物起源のバリウムおよびオパールの粒子が堆積後に溶解し,それが底層水へ再生・回帰していると考えられる. 2.太平洋中央域および東太平洋赤道域における堆積物粒子中の生物起源オパールおよびバリウムの含有量を測定した.予想されるように,高緯度や赤道域の生物生産の高い海底において,それらの成分は高含有量を示した3.海洋表層の生物生産に関係して重晶石粒子(硫酸バリウム)が形成すると考えられている.重晶石の比重(d)は4.5であり,カルサイト(d=2.7)やオパール(d=1.9-2.2),粘土鉱物(d=2.5-2.8)に比べて大きい.このことを利用し,重液を使うことによって重晶石と他の鉱物とを分離することが可能である.オーストラリアCentral Chemical Consulting Pty Ltd製の重液(LST:タングステン酸塩の調整品。密度2.85g/cm^3)を用いて重鉱物粒子を捕集した。この粒子群を走査電子顕微鏡によって観察したところ,米粒様の白色粒子であり,長径は数マイクロメートルであった.X線マイクロアナライザーを用いて元素組成を調べたところ,これらの粒子はバリウムとイオウからなる重晶石鉱物であると同定された.この方法によって,ピストンコアコア中の重晶石の分布を調べたところ,氷期に増加する傾向があり,最終氷期最寒期における重晶石の質量堆積速度は現在よりも低かったことがわかった.このような重晶石粒子の年代変動は古海洋生物生産のプロキシーと成りうることが示唆された.
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