2009 Fiscal Year Annual Research Report
渦相関フラックス測定に伴う熱収支インバランス現象の解明
Project/Area Number |
19510020
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡辺 力 Hokkaido University, 低温科学研究所, 教授 (60353918)
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Keywords | フラックス / 渦相関法 / 熱収支 / インバランス / タワー観測 / LES |
Research Abstract |
森林総合研究所の川越タワー観測サイトで得られた過去の乱流観測データおよび微気象観測データを合わせて精査したところ以下のことが明らかとなった。すなわち、顕著な熱収支インバランス現象が起きるのは、日射量が大きく風が比較的弱い時、つまり大気境界層内において半定常的な対流セルが形成されやすい条件の時である。このような条件の時には、水蒸気密度の乱流時系列において、温度変動とは相関せず、むしろ水平風速の変動と連動した、時間スケールの大きな変動がしばしば見られる。しかし、日射量が大きい場合でも、風が十分強い時には、熱収支はほぼバランスするか、むしろ渦相関フラックスが過大評価となることもある。このような時の乱流時系列においては、森林群落上に形成される組織的乱流構造の通過に伴う、鋸歯状の変動パターン(いわゆるランプパターン)が卓越し、温度変動と水蒸気変動の相似性もよい。 この解析結果は、並行して進めてきた、LESによる数値シミュレーションの結果とも整合的である。つまり、完全に水平一様な地表面上であっても、持続時間の長い対流セルが発達するような場合には、渦相関法による1地点観測では地表面フラックスを過小評価する可能性が高い。このとき、混合層上端におけるエントレインメントによって境界層内に取り込まれた乾燥空気の影響が地表面付近にも及び、温度変動と相関しない水蒸気変動をもたらす原因となる。 以上より、日射量が大きく、かつ測定された乱流時系列においてスカラー間の非相似性が見られた場合には、渦相関法によるフラックスが過小評価となる可能性が高く、その解釈には注意が必要である。
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