2008 Fiscal Year Annual Research Report
放射性炭素を利用した土壌呼吸起源の定量的評価とその変動因子の解明
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19510024
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
安藤 麻里子 Japan Atomic Energy Agency, 原子力基礎工学研究部門, 研究副主幹 (20354855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小嵐 淳 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究員 (30421697)
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Keywords | 土壌呼吸 / 放射性炭素 / 土壌有機物分解 |
Research Abstract |
森林において、土壌表面から放出されるCO_2の起源には植物の根呼吸と微生物呼吸(土壌有機物分解とリター分解)がある。植物体と土壌有機物が異なる放射性炭素濃度(以下、Δ^<14>C)を持つことを利用し、土壌呼吸中Δ^<14>Cと各CO_2発生源のΔ^<14>Cを測定することで、根呼吸と微生物呼吸を分けて評価する手法を開発した。その手法を用い、岩手県安比森林気象試験地(ブナ二次林)を対象として、積雪期を除いた5月から10月の間月1回観測を実施し、各土壌呼吸起源からのCO_2フラックスの定量的評価を行った。 根呼吸と土壌有機物分解により放出されるCO_2のΔ^<14>C(Δ^<14>C_<root>,Δ^<14>C_<SOM>)がわかれば、リターを取り除いた状態での土壌呼吸中Δ^<14>C(Δ^<14>C_<res>)を測定することで、根呼吸と土壌有機物分解の寄与率を計算することができる。全体の土壌呼吸及びリター分解によるCO_2放出速度、Δ^<14>C_<res>は密閉チャンバー法により測定した。また、Δ^<14>C_<root>はブナの葉の位置の大気CO_2中Δ^<14>Cから、Δ^<14>C_<SOM>は土壌有機物中Δ^<14>Cから推定した。土壌有機物及びリターの分解によるCO_2フラックスは地温と高い相関を持つ季節変動を示し、根呼吸は7月に高い割合を示すことが明らかとなった。地温の連続測定結果を用いて推定した年間の土壌呼吸量に対する各起源の寄与率は、微生物呼吸が65%,根呼吸が35%であった。本研究により、土壌を攪乱せずに同じ場所で土壌呼吸起源の分別定量が可能となり、季節変動を測定することで地温と微生物呼吸の関係をより正確に評価することができた。本手法は、環境因子の変動が各土壌呼吸起源からのCO_2放出に与える影響の解明に役立つ。
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