2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19510033
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
東條 元昭 Osaka Prefecture University, 生命環境科学研究科, 准教授 (90254440)
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Keywords | 極地 / 地球温暖化 / 植物病原菌 / 土壌糸状菌 / コケ / 陸上植物 |
Research Abstract |
温帯や熱帯の植物と同様に,極地に自生するコケや顕花植物にも植物病原菌が広く感染し,一部の地域では枯死などの被害が発生している。これら極地の植物病原菌の多くは,これまでに報告の無い種が多く,それらの生態についてはほとんどわかっていない。一方,近年の気候変動により植物病原菌と宿主植物とのバランスが崩ずれ,これまでにない植物病害が世界的に頻発している。とくに極地は,温暖化の進行が他の地域よりも急速で,植物病原菌と宿主植物とのバランス崩壊がより速く進んでいる可能性がある。この研究の目的は,極地に発生する植物病原菌を対象として,それらの種を特定するとともに,植物病原菌と宿主植物とのバランスの変化の実態を明らかにすることである。 本年度は,本研究で前年度に開発した選択的分離培地を用いて極地のコケからぶんりされた植物感染性糸状菌のPythium属菌分離株の同定を試みた。とくにノルウェー領スピッツベルゲン島および南極半島周辺の島々から分離された同属菌の同定を行った.その結果,これらの分離菌株は,スピッツベルゲン島では6つの,南極半島周辺の島々では2つの種レベルで異なるPythium属菌に類別されることがわかった。そこでこの成果の一部を,ノルウェー政府が主催する陸上生物学集会(Terrestrial Ecosystem Workshop)で招待講演として発表した(Tojo 2009)。さらに,他の極地や国内の寒冷地から分離された植物病原菌の同定や生態解析を行い,いくつかの新知見を得た。これらについては論文(Masumoto et al. 2009, Hoshino et al. 2010)および口頭発表で報告した。
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