2008 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ素材がアレルギーに与える影響とメカニズムの解明に関する研究
Project/Area Number |
19510037
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
井上 健一郎 National Institute for Environmental Studies, 環境健康研究領域, 室長 (20373219)
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Keywords | 健康影響評価 / ナノ素材 / アレルギー |
Research Abstract |
近年のナノテクノロジーの発展・応用により、産出されるナノメーターサイズのナノ素材の環境中への放出と増加が明らかとなり、生体への曝露とそれに伴う健康影響が危惧されつつある。しかし、同素材曝露による生体影響評価研究は世界中で充分には行われていない。特に、アレルギー等粒子状物質に高感受性を示す集団への相加・相乗影響を検討した研究は稀有である。本研究では、物性・大きさの異なる数種類のナノ素材が生体に及ぼす影響を、アレルギーへの悪影響に着目し、アレルギー性喘息やアレルギーに関わる細胞ネットワークに与える影響として、動物個体レベル(in vivo)と細胞レベル(in vitro)で検討するとともに、そのメカニズムを解明することを目的とした。1)in vivo試験において、vehicle(コントロール)、multi-walledカーボンナノチューブ(MWCNT)、抗原(チキン卵白アルブミン:OVA)、MWCNT+OVAをそれぞれマウスに反復気管内投与したところ、抗原単独投与群で認められたアレルギー性気道炎症や粘液産生、抗原特異的イムノグロブリン産生等のアレルギー病態はMWCNT+OVA群において有意に増悪した。また、Th2サイトカインやエフェクター白血球のホーミング、浸潤、活性化に関わるケモカインの肺でのタンパク発現も、MWCNT+OVA群において抗原単独群と比較して、有意な増強を認めた。一方、ラテックスナノ粒子曝露は、同気道炎症やアレルギー反応に有意な修飾影響をもたらさなかった。2)in vitro試験において、マウス骨髄細胞から分化・成熟させた樹状細胞に上記ナノ素材を曝露したところ、同細胞の活性が増強した。以上より、ある種のナノ素材は、喘息をはじめとするアレルギー疾患の病態を悪化させること、その標的細胞として樹状細胞をはじめとする抗原提示細胞があげられることが明らかとなった。
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