2010 Fiscal Year Annual Research Report
植物プランクトンの種間競争に及ぼす窒素:リン比の影響に関する研究
Project/Area Number |
19510038
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Research Institution | Lake Biwa Environmental Research Institute |
Principal Investigator |
辻村 茂男 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, 総合解析部門, 専門研究員 (60300969)
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Keywords | 環境 / 生物圏現象 / 湖沼生態 / 植物プランクトン |
Research Abstract |
植物プランクトン各分類群の最適NP比と実際に増殖に影響が生じる増殖制限NP比に関する室内実験で得られた結果を検討したところ、どの分類群においても、ゆとりとして貯蔵できる量はNに比べPが多く、増殖制限となるNP比は、最適NP比や制限栄養塩の目安として使われてきたレッドフィールド比より大きなNP比となった。したがって、従来考えられていたより植物プランクトンはN制限になりやすいことが示された。Microcystisの増殖制限NP比は他の分類群に比べ高いことが多く、近年の琵琶湖におけるNP比の上昇がラン藻類にとって有利に働く可能性が示唆された。ただし、緑藻類では種によって様々な増殖制限NP比がみられ、NP比の影響は分類群ではなく種レベルで検討する必要のあることが明らかとなった。最近、琵琶湖で秋季に増殖がみられるDimorphococcusは最適NP比、増殖制限NP比ともに他の植物プランクトンに比べて低く、N制限の影響を受けにくいことが示唆された。 野外調査は前年度に引き続き、施設前の桟橋(琵琶湖南湖)を定点として1週間に1回程度の採水を11月まで実施し、植物プランクトン計数、クロロフィル濃度の測定、PAMを用いたクロロフィル励起蛍光法による光合成活性と電子伝達速度の測定、蛍光光度法によるアルカリフォスファターゼ活性の測定、オートアナライザーと分光光度計による全N・P濃度、無機態N・P濃度の測定、炭素窒素分析装置によるセストンC・N濃度の測定などを行った。溶存態リン濃度は夏期におそらく底泥からの供給で上昇するのに対し、溶存態窒素は夏から秋に枯渇状態となることが4年間ともに観測されたが、この変動のタイミングの違いが毎年の供給NP比の変化を生み出しており、このことが植物プランクトンの種組成と優占状況に影響していると推察された。
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Research Products
(2 results)