Research Abstract |
中央環境審議会が平成11年12月に取りまとめた答申「これからの環境教育・環境学習:持続可能な社会をめざして」においては,多様化・深刻化する環境問題に対応していくためには,国民一人ひとりが人間と環境との相互作用について理解と認識を深め,環境に配慮した生活・行動を行っていくことが必要であり,行政,事業者,民間団体,個人が連携を図りつつ,幼児から高齢者までのそれぞれの年齢層に対して,学校,地域,家庭,職場,野外活動等の多様な場において,環境教育・環境学習を総合的に推進することが重要であると指摘している.すなわち,ここで言う環境教育(Environmental Education)とは,教育を施すことによって,個人が自らの行動の長期的影響を考慮し,理解を深め,合理的な行動を行うように変容することを想定しているものと考えられる. 本研究では,個人自らの最適計画を自ら変更してしまうような自己矛盾的行動を,動学的不整合性の問題として捉え,これまでの標準的な動学 理論が仮定する割引率一定の指数関数型の割引関数ではなく,時間の減少関数である双曲線型割引関数に着目した意思決定モデルを構築する.一方,本研究では,自己矛盾的行動を回避する手段として,財・サービス消費のあり方に対する環境教育を考え,環境教育により動学的不整合が解消するという合理化への態度・行動変容モデルを構築した.さらに,本研究では,現在偏重型選好,すなわち,個人は遠い将来よりも近い将来を偏重する傾向を個人の主観的割引率に関するアンケート調査を実施することにより,定量的に明らかにする.この際,プロトコル分析を行うことにより,如何なる環境教育の方法およびあり方が有効であるかを検討する.このことにより,本研究で構築した理論モデルの適用可能性を吟味する.
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